カーボンニュートラルにおける火力発電所は“悪”なのか?

今や原子力発電に変わり日本の電気供給を支えている火力発電所ですが、カーボンニュートラル宣言を受けて、“悪”にされようとしています。

火力発電所には、燃料を燃やして、ボイラーで水を沸騰させて水蒸気を作り、その水蒸気でタービンを廻して発電する汽力発電、ガスタービンと蒸気タービンの2つを組み合わせて発電するコンバインドサイクル発電などがあり、その燃料は石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料を用いています。日本には約190基の火力発電所が存在しています。

(電気事業連合会のHPより引用)
コンバインドサイクル発電の仕組み(電気事業連合会のHPより引用)

火力発電所のデメリットとしては、資源として限りのある石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料を大量に消費してしまうことや我が国ではその燃料の大半を輸入に頼っていることに対する経済性などがありますが、なんといっても一番のデメリットは二酸化炭素などの温室効果ガスを排出してしまうことです。

人間というのはどうしてもデメリットばかりに注目してしまうのですが、当然ながら火力発電にもメリットもあります。そもそもメリットがなければ事業として成り立ちませんので、メリットを紹介します。

①.安定的に発電できる

なんと言っても火力発電の最大のメリットは、燃料があるかぎり安定的に発電できる点です。太陽光発電や風力発電とは違って天候に左右されることはありませんし、ダムのように雨が降らなくて干上がってしまうこともありません。

②.エネルギー変換効率が高い

一般的な火力発電のエネルギー変換効率は35~43%、最新の発電所では55%以上になってきており、数ある発電方法の中では水力発電に次いで2番目に良い数字を示しています。

③.出力調整が容易

季節や昼夜などで大きく変化する電気の使われ方に合わせて発電したり、出力の増減を細かく・素早くコントロールしやすいので、電力ネットワーク全体の状況に合わせた運転が可能です。

火力発電については、カーボンニュートラル宣言の前に、非効率な火力発電所は早期削減するよう政府から方針を打ち出されていますが、先日、一般社団法人である火力原子力発電技術協会の会長である井出俊一郎氏が電気新聞編集局長である真庭正弘氏との会談で火力発電所が脱炭素化で担うべき役割について、述べておられました。

※火力原子力発電技術協会とは火力発電及び原子力発電に関する技術等に係る調査研究、規格標準等の作成、情報の収集及び提供、技術者の育成並びに内外関係機関等との交流協力を推進することにより、発電技術等の発達改善を図り、日本国の経済の発展に寄与することを目的した組織であり、先日創立70周年を迎えた組織です。

「東日本大震災以降、火力発電所、特に石炭を燃料にする火力発電所は安価なベース電源をしてスポットを当てられ、注目されるようになった。現在の日本は約8割の電源を火力発電により賄っている状況であり、不安定な再生可能エネルギーを補う調整力や信頼性からしても、単純に脱火力発電では国民の生活が成り立たなくなる。一方で火力発電から排出される二酸化炭素については、回収し、セメントに混ぜたり、燃料として再利用するなどのリサイクルを行うなど、そういった手段を今後、考えていかなくてはならない。」

今後、カーボンニュートラルに向けて、様々な発電方法や技術開発がされていくと思いますが、単純に火力発電を“悪”にするのでなく、火力発電のメリットを活かした使い方や技術開発をする必要があります。

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