原子力発電所に聳え立つ司法の壁

関西電力 大飯原子力発電所3,4号機は12月4日に行われた大阪地方裁判所の裁判で、国側である原子力規制委員会の審査過程に看過しがたい誤りや欠落があるとして、原発の設置許可(原子力発電所を設置するための国の許可のこと)を取り消す判決を下しました。

これは大飯原子力発電所に起きる最大規模の地震の大きさを示す「基準地震動」について、市民グループが「大地震への耐震性が不十分だ」と主張して訴えを起こし、設置を許可した原子力規制委員会の決定を取り消すよう求めていた裁判です。

過去には、四国電力の伊方原子力発電所3号機に対して火山の巨大噴火に対する検討が不十分として、広島高等裁判所が運転停止の仮処分(現在は取り消し)を下したことはありますが、司法が原子力発電所の設置許可を取り消したのは今回のケースが初めてです。

原子力発電所のような専門的な分野において、司法が口出しすることはタブーのような扱いもありましたが、この判決は国や電気事業者に対するけん制になったのではないでしょうか。

関西電力はこの基準地震動の策定に向けて、国が策定している審査ガイドに沿って設定しているもので、新規制基準をクリアするための審査会合やヒアリングにおいて、説明責任を果たしており、国もこれを認可しているわけですから、国側である原子力規制委員会の対応に注目が集まっていました。

当然ですが、原子力規制委員会はこの判決が不服として、大阪地方裁判に12月17日に控訴(第一審の判決に対して不服がある場合に、上級の裁判所に対してその判決の確定を遮断して新たな判決を求める不服申立てのこと)しました。

今後、原子力規制委員会は大阪高等裁判所で事実関係を争うことになります。

焦点となるのは基準地震動に対するばらつきや不確かさなどの条件をどこまで保守的に考量するかであり、経験式と呼ばれる今までの観測データにどこまで余裕を考慮するかとなっています。

原子力規制委員会と各電力会社で行っている原子力発電所に対する新規制基準への適合性確認審査においても、よく”保守的”や”網羅的”などの発言が飛び交っていますが、科学的な根拠がないデータなどのについては、一定以上の余裕がないと原子力発電所の設計としては認めてもらえません。

その余裕について、原子力規制員会は各電力会社にその妥当性を示すよう審査を行っているわけですが、今回は国である原子力規制員会がその妥当性を説明することになり、立場が異なることから、どのような説明をするのか、注目が集まっています。

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