はじめに:「もっと走らなきゃ」は本当か?
マラソンで自己ベストを更新したい。
そう思ったとき、私たちはつい「もっと走らなきゃ」「もっと追い込まなきゃ」と考えがちです。 でも、それが逆効果になることもある。
むしろ、頑張りすぎないことが、記録更新の近道になるとしたら?
今回ご紹介するのは、津田誠一さん著『常識破りの川内優輝マラソンメソッド』。
元公務員ランナー・川内優輝選手を育てた恩師が語る、常識を覆すマラソン戦略です。
この本には、限られた時間とリソースの中でも成果を出すための「設計力」と「考え方」が詰まっています。
そして何より、忙しい社会人ランナーにとって「これは自分にもできるかも」と思わせてくれる内容でもあります。
第1章:川内優輝という“異端”の強さ
川内優輝選手といえば、マラソン2時間20分以内(サブ20)の最多完走数でギネス記録を持つ、元・埼玉県庁職員のプロランナー。
直近では「びわ湖毎日マラソン」で自己ベストとなる2時間7分27秒を記録し、再び注目を集めました。
しかし、そんな彼も高校時代は故障続きで無名の存在。
転機となったのは、学習院大学で出会った津田誠一監督との出会いでした。
津田監督の指導方針は、従来の「走り込み至上主義」とは真逆。
「頑張るな」「楽しめ」という言葉を繰り返し、川内選手に“壊れない走り方”を教えたのです。
第2章:津田式メソッドの全体像
津田監督の練習法は、シンプルでありながら本質的です。
その核となるのが、以下の3つの原則です。
- オーバートレーニングを避ける
- 練習にメリハリをつける
- 走りを楽しむことを忘れない
具体的には、ポイント練習は週2回。
1回はスピード練習、もう1回は距離走(レースで代用することも)。
それ以外の日はジョグでつなぎ、疲労を抜くことを重視します。
この「頑張りすぎない設計」が、川内選手の強さの土台になっているのです。
第3章:川内選手の練習スタイルに学ぶ
公務員時代の川内選手の月間走行距離は約600km。
実業団ランナーの800〜1000kmに比べると、決して多くはありません。
それでも結果を出せたのは、練習の“質”と“設計”に秘密があります。
- 平日は1日1回の練習。通勤ランや坂ダッシュで効率化
- 週末はレースを距離走代わりに活用
- 忙しいときは短時間・高強度の練習でカバー
プロ転向後に月間1000kmまで距離を伸ばしたものの、記録は伸び悩み。
そこで再び600〜700kmに戻したところ、自己ベストを更新。
このエピソードは、「量より質」の重要性を物語っています。
第4章:練習で意識すべき5つのポイント
津田式メソッドを実践するうえで、特に重要な5つのポイントを紹介します。
① フォームを崩さないスピードで走る
練習中にフォームが乱れるほど追い込むのはNG。
「もう1本いけたな」と思えるくらいで終えることで、故障リスクを抑え、継続性を高めます。
② 繋ぎのジョグを短く・リズムよく
インターバル走では、1本ごとのスピードよりも“繋ぎ”のジョグに注目。
200mジョグを65〜70秒でつなぐことで、心肺機能とスピード持久力を同時に鍛えます。
③ リズムを最優先する
津田監督は「リズム感がなくなったら終わり」と語ります。
タイムよりも、一定のテンポで淡々と走ることが、長距離の安定感を生む鍵です。
④ 膝の“タメ”を使う
膝のクッションを活かして、着地時の衝撃を吸収。
これにより、疲労を抑えながらスピードを維持できます。
⑤ 距離と本数は守るが、ペースは調整する
調子が悪い日はペースを落としてもOK。
ただし、設定した距離や本数はこなすことで、最後まで押し切る力が養われます。
第5章:「楽しむ」ことが最強の近道
津田監督の練習哲学は一貫しています。
「走ることが嫌いにならない練習をすること」。
記録を追いすぎて、走ることが苦痛になってしまっては本末転倒。
「走った後においしいお酒を飲めるくらいがちょうどいい」と語るその姿勢に、私は深く共感しました。
マラソンは長期戦。
だからこそ、楽しみながら続けられる設計が必要なのです。
第6章:私がこの本から得た3つの実践知
この本を読んで、私自身の練習や考え方にも大きな影響がありました。
特に印象に残ったのは、次の3点です。
- 練習は「設計力」がすべて → 週単位での練習設計が、成果を左右する
- “休む勇気”がパフォーマンスを底上げする → 疲労を抜くことも、立派なトレーニング
- 「自分の走り」を見つけることが最強の武器 → 他人の真似ではなく、自分の身体に合ったリズムとフォームを探る
おわりに:常識を疑い、自分の“最適”を探そう
川内優輝選手のように、限られた時間とリソースの中でも記録を伸ばすことは可能です。
その鍵は、「常識を疑うこと」と「自分の身体と対話すること」。
この本は、そんな視点を与えてくれる一冊です。
「もっと走らなきゃ」と焦っている方にこそ、読んでほしい。
そして、走ることがもっと楽しく、もっと自分らしくなるきっかけになれば嬉しいです。
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