政府は昨年末に2050年カーボンニュートラルに向けたグリーン成長戦略を示しました。課題や工程を整理した実行計画を14の重点分野に渡り策定し、今後、二酸化炭素排出量「実質ゼロ」に向けて歩んでいくことになります。
14の重点分野の実施計画については、以下のリンク先である経済産業省HP資料に記載されていますが、主な要点を簡単に以下に記載します。
①洋上風力産業
◆魅力的な国内市場を創出することにより国内外の投資を呼び込み、競争力があり強靱なサプライチェーンを構築。更に、アジア展開も見据えた次世代技術開発、国際連携に取り組み、国際競争に勝ち抜く次世代産業を創造していく。
②燃料アンモニア産業
◆燃焼してもCO2を排出しないアンモニアは、石炭火力での混焼などで有効な燃料。混焼技術を早期に確立し、東南アジア等への展開を図るとともに、国際的なサプライチェーンをいち早く構築し、世界におけるアンモニアの供給・利用産業のイニシアティブを取る。
③水素産業
◆水素は、発電・産業・運輸など幅広く活用されるカーボンニュートラルのキーテクノロジー。日本が先行し、欧州・韓国も戦略等を策定し、追随。今後は新たな資源と位置付けて、自動車用途だけでなく、幅広いプレーヤーを巻き込む。
◆ 目標:導入量拡大を通じて、水素発電コストをガス火力以下に低減(水素コスト:20円/Nm3程度以下)。2050年に化石燃料に対して十分な競争力を有する水準を目指す。導入量は2030年に最大300万トン、2050年に2,000万トン程度を目指す。
※ うち、クリーン水素(化石燃料+CCUS、再エネなどから製造された水素)の供給量は2030年の独の再エネ由来水素供給量(約42万トン/年)を超える水準を目指す。
④原子力産業
◆ 原子力は、実用段階にある脱炭素の選択肢。国内での着実な再稼働の進展とともに、海外(米・英・加等)で進む次世代革新炉開発に、高い製造能力を持つ日本企業も連携して参画し、多様な原子力技術のイノベーションを加速化していく。
⑤自動車・蓄電池産業
◆ 2050年の自動車のライフサイクル全体でのカーボンニュートラル化を目指すとともに、蓄電池産業の競争力強化を図る。
⑥半導体・情報通信産業
◆①デジタル化によるエネルギー需要の効率化(「グリーン by デジタル」)と、②デジタル機器・情報通信の省エネ・グリーン化(「グリーンof デジタル」)の二つのアプローチを車の両輪として推進。
⑦船舶産業
◆ゼロエミッションの達成に必須となるLNG、水素、アンモニア等のガス燃料船開発に係る技術力を獲得するとともに、国際基準の整備を主導し、我が国造船・海運業の国際競争力の強化及び海上輸送のカーボンニュートラルに向けて取り組む。
⑧物流・人流・土木インフラ産業
◆カーボンニュートラルポートの形成、スマート交通の導入、自転車移動の導入促進、グリーン物流の推進、交通ネットワーク・拠点・輸送の効率化・低炭素化の推進、インフラ・都市空間等でのゼロエミッション化、建設施工におけるカーボンニュートラルの実現に総合的に取り組むことで、物流・人流・土木インフラ産業での2050年のカーボンニュートラル実現を目指す。
⑨食料・農林水産業
◆スマート農林水産業等の実装の加速化によるゼロエミッション化、農畜産業由来のGHGの削減、農地・森林・海洋における炭素の長期・大量貯蔵等、吸収源の取組を強力に推進し、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する。
◆世界のGHG排出量のうち農林業等由来の排出が1/4を占めている現状を踏まえ、我が国の優れた技術の国際展開、国際的な議論・ルールメイキングへの積極的な関与により、世界のカーボンニュートラルに貢献する。
⑩航空機産業
◆国際航空において急速に低炭素要求が強まりつつある中、ICAO(国際民間航空機関)は2019年比でCO2排出量を増加させないことを制度化。グリーンによる技術の変わり目を、我が国航空機産業の競争力を飛躍的に強化するチャンスと捉え、複合材、電動化、水素や代替燃料などの複数の要素における技術的優位性の確立を目指す。
⑪カーボンリサイクル産業
◆カーボンリサイクルは、CO2を資源として有効活用する技術でカーボンニュートラル社会実現に重要。日本に競争力があり、コスト低減、社会実装を進め、グローバル展開を目指す。(IEAは、2070年のCCUSによるCO2削減量は世界で約69億トン/年と予測。)
⑫住宅・建築物産業/次世代型太陽光産業
◆住宅・建築物は、民生部門のエネルギー消費量削減に大きく影響する分野。カーボンニュートラルと経済成長を両立させる高度な技術を国内に普及させる市場環境を創造しつつ、くらし・生活の改善や都市のカーボンニュートラル化を進め、海外への技術展開も見込む。
⑬資源循環関連産業
◆リデュース、リユース、リサイクル、リニューアブルについては、法律や計画整備により技術開発・社会実装を後押ししている。廃棄物発電・熱利用、バイオガス利用については、既に商用フェーズに入っており普及や高度化が進んでいる。今後、これらの取組について、「国・地方脱炭素実現会議」等における議論を踏まえつつ、技術の高度化、設備の整備、低コスト化等により更なる推進を図る。
◆循環経済への移行も進めつつ、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする。
⑭ライフスタイル関連産業
◆「国・地方脱炭素実現会議」等における議論を踏まえつつ、住まい・移動のトータルマネジメント(ZEH・ZEB、需要側の機器(家電、給湯等)、地域の再生可能エネルギー、動く蓄電池となるEV/FCV等の組み合わせを実用化)、ナッジやシェアリングを通じた行動変容、デジタル技術を用いたCO2削減のクレジット化等を促す技術開発・実証、導入支援、制度構築等に取り組む。
◆これらにより2050年までにカーボンニュートラルで、かつレジリエントで快適なくらし(「脱炭素プロシューマー」への転換によりエネルギーで稼ぐ時代へ)を実現する。
*脱炭素プロシューマー:再生可能エネルギーで作り出すエネルギーが消費よりも多い家庭
【経済産業省資料】
・資料1 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(経済産業大臣説明資料)(PDF形式:3,305KB)
【カーボンニュートラルの産業イメージ】
【カーボンニュートラルの広がり】
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