みなさんは「正常性バイアス(Normalcy Bias)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
バイアス(Bias)とは、偏見や先入観といった意味を持つ言葉で、正常性バイアスとは自分に都合の悪い事態が起こっても、それを自分の都合の良いように“正常”として捉えることです。「日常性バイアス」とも呼ばれていますが、主に心理学の場で用いられる言葉なので、あまり聞きなれない言葉だと思います。
この働きは、私たちが日々の生活を送るなかで生じるさまざまな変化や新しい出来事に、過剰に反応し、疲弊しないために備わっている働きです。
例えば、仕事中にオフィスで火災報知器が鳴っていても「どうせ誤報だろう!?」と思い込み、非難が遅れるてしまうようなことです。その結果、初期対応や避難が遅れ、事態や被害が大きくなってしまった事例もたくさんあります。
そしてもう1つこの正常性バイアスについて理解を深めることになったのが、スウェーデンの環境活動家である「グレータ・エルンマン・トゥーンベリ」さんが、2018年に「気候のための学校ストライキ」という看板を掲げて、気候変動対策をスウェーデン議会の前で呼びかけを行った騒動です。
彼女はその時15歳でしたが、この行動がSNSなどを通じて世界中に拡散し、勇気ある行動だと賞賛する声もあれば、そんなことしてないで学校で学ぶべきだなど言った批判も相次ぎました。驚くべきことに彼女を批判した人の中には、国の大臣や首相もいたくらいですから、どれほど影響が大きかったのかは、この騒動をご存じない方でも想像できるのではないでしょうか。
彼女の活動は後にノーベル平和賞にノミネートされるほど大きいものでしたが、彼女自身が訴えているのは「温暖化に対策についてもっと積極的に行動してほしい」「もう少し科学者の声に傾けてほしい」というもので、決して非科学的なものではありませんでした。特に彼女が主張した地球温暖化については、科学者だけではなく誰の目から見ても何とかしないといけない問題にもかかわらず、大人たちは彼女を批判したのです。
ではなぜ大人たちは、彼女がいくら正論を訴えても批判したのでしょうか?
これはナイーブ・シニシズムという自分より相手の方が自己中だと思う心理現象であったり、地球温暖化の不安から逃れるために、地球温暖化など起きていないと思い込む正常性バイアスが原因です。
温暖化対策だけではなく、現在の新型コロナウイルス対策でも緊急事態宣言が出ているのに、不要不急でもなく外出してしまうのもこの正常性バイアスが原因です。
私たち人間は不安から逃れるために都合よく物事を考えてしまいがちですが、そういった思考や行動パターンの原理を知っていると、自分を客観的に見つめることが出来るので、誤った言動を行うことが少なくなります。
そのようなことが以下に紹介する本にも記載されていますので、興味がある方は読んでみてくください。私もとても参考になりました。
~人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学~
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