今回は角田光代さんの著書「対岸の彼女」をご紹介します。
本書の主人公は2人の女性。
1人は旦那と娘を持つ専業主婦の田村小夜子。もう1人は独身で有限会社の社長を務める楢橋葵。2人は共に35歳で、小夜子が働きに出た先の会社の社長が葵であり、2人は同じ大学の出身という共通点から意気投合し急速に仲が深まりますが、次第に2人の関係性に亀裂が生じます。
独身女性と主婦。社長と部下。外交的な性格と内向的な性格。様々な相違点が2人の関係性の壁となり立ちはだかります。
本書はそんな2人の関係性を現在と過去の視点でストーリー展開されますが、ともに独りぼっち恐怖症世代が抱く、幻想が集約されている作品のように思います。
友達が多い子は明るい子で友達が少ない子は暗い子。そして暗い子はいけない子。
現代でこそ、それを個性と呼べるようになりつつありますが、まだまだ世間のイメージとしては根深いものがあるように感じています。
人は誰かと繋がることで、自分の中の足りないものを埋めようとしますが、埋めた穴も直ぐにまた穴が開くものです。
その繰り返しが、人間関係の疲労感を生み出し、やがて人は誰かと繋がることが煩わしく、鬱陶しく感じるようになります。
本書はそんなループから抜け出し、前に進もうと思わせてくれる作品となっていますので、是非、人間関係に疲れた方は読んでみてください。
読み終わることには、あなたも少しだけ前に進もうと思うはずです。
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