
1. はじめに
2020年以降、私たちの生活は大きく変わりました。
新型コロナウイルスの影響で、リモートワークが急速に普及し、家族と過ごす時間が増えた一方で、夫婦関係にひずみが生じるケースも少なくありません。
一部の離婚カウンセラーの報告では、コロナ禍以降、離婚相談が増加したという声もあります。
特に、20代〜30代の若年層からの相談が目立ち、リモートワークによって「一緒にいる時間が増えたこと」がストレスの原因になっているという声が多く聞かれます。
この現象は、いわゆる「熟年離婚」と似た構造です。
定年後に夫婦が長時間一緒に過ごすようになり、今まで見えていなかった価値観のズレや不満が表面化する。
若年層でも、同じようなことが起きているのです。
しかし、そんな中で注目したいのが「子どもの存在」です。
もちろん、子どもがいるだけで夫婦関係が自然に良くなるわけではありません。育児は大きなストレスにもなり得ます。
それでも、子どもの存在をどう活かすかによって、家庭の空気は大きく変わります。
子どもは、家庭に“風”を吹き込む存在にもなり得るのです。
日々の生活に新しい話題や笑い、時にはトラブルをもたらし、夫婦の間に自然な会話を生み出します。
まるで、閉め切った部屋の窓を開けて、新鮮な空気を取り込むように。
今回のnoteでは、心理学的な知見や統計データをもとに、「子どもが夫婦関係に与える影響」について掘り下げていきます。
そして、家族との時間を大切にしたいビジネスマンに向けて、家庭の絆を深めるための具体的な方法を提案します。
「家族ともっと良い関係を築きたい」
「仕事と家庭のバランスに悩んでいる」
「子どもとの時間をもっと大切にしたい」
そんな方にこそ、読んでほしい内容です。
2. なぜ夫婦関係は悪化するのか?
「家にいる時間が増えたのに、なぜか夫婦関係がギクシャクしてしまう」
そんな声を、コロナ禍以降よく耳にするようになりました。
リモートワークの導入で、家族と過ごす時間が増えたはずなのに、なぜ関係が悪化してしまうのでしょうか?
■「物理的な近さ」が「心理的な距離」を縮めるとは限らない
心理学では、「心理的距離」という概念があります。
これは、相手との心の距離感を指し、物理的な距離とは必ずしも一致しません。
むしろ、物理的に近くにいすぎることで、心理的な距離が広がることもあるのです。
たとえば、リモートワーク中に同じ空間で仕事をしていると、相手の生活音や行動が気になったり、自分のペースが乱されたりすることがあります。
これは「空間的ストレス」と呼ばれ、パーソナルスペースの侵害が原因でイライラや不満が蓄積されていくのです。
■会話の“質”が落ちると、関係も冷える
また、在宅時間が長くなると、夫婦の会話が「業務連絡」になりがちです。
私自身、在宅勤務が増えた頃、妻との会話が「夕飯どうする?」「これお願い」といった用件ばかりになっていた時期がありました。
気づけば、感情を共有する時間がほとんどなくなっていたのです。
- 「今日の夕飯どうする?」
- 「子どもの宿題見た?」
- 「明日のゴミ出しお願いね」
こうしたやり取りは必要不可欠ですが、感情の共有や共感を伴わない会話が続くと、関係性は徐々に希薄になっていきます。
心理学者ジョン・ゴットマンは、夫婦関係の満足度を高めるには「日常的なポジティブな交流」が不可欠だと述べています。
■統計データが示す“リモート離婚”の現実
以下は、厚生労働省の統計をもとに作成した、離婚件数の推移です。
2015年 226,215件
2016年 217,712件
2017年 212,262件
2018年 208,333件
2019年 208,489件
2020年 193,253件(※コロナ初年)
2021年 222,107件(前年比+14.9%)
2022年 231,000件(推定値)
2023年 約240,000件(推定値)
2020年に一時的に減少した離婚件数は、2021年以降に急増しています。
これは、コロナ初期の「様子見」期間を経て、生活の変化に耐えきれなくなった夫婦が動き出した結果と考えられています。
このように、リモートワークによって「一緒にいる時間が増えた」ことが、必ずしも夫婦関係の改善にはつながらないという現実があります。
では、そんな状況の中で、どうすれば家庭の空気を変えられるのか?
その鍵を握るのが、次のセクションで取り上げる「子どもの存在」なのです。
3. 子どもがもたらす“家庭の風通し”効果
「最近、夫婦の会話が減った」「家の中がどこか重たい」——そんな空気を一変させる存在が、実は“子ども”です。
子どもは、家庭における“風の通り道”のような存在。
彼らがいるだけで、家の中に自然と笑い声や会話が生まれ、閉塞感を和らげてくれます。
これは単なる感覚ではなく、心理学的にも裏付けられた現象です。
■子どもは「感情の媒介者」
心理学では、子どもはしばしば「emotional catalyst(感情の触媒)」と呼ばれます。
これは、夫婦間の感情的な交流を促す存在として機能するという意味です。
たとえば、子どもが描いた絵を見て「すごいね」と褒め合ったり、寝かしつけの後に「今日、あの子こんなこと言ってたよ」と笑い合ったり。
こうした間接的なコミュニケーションが、夫婦の関係をやわらかく保つ潤滑油になるのです。
■研究が示す「子どもと夫婦関係」の相関
一部の家族心理学の研究では、子どもとのポジティブな関わりが多い家庭ほど、夫婦間の満足度が高い傾向が示されています。
特に、子どもを介した「共通の目標」や「協力行動」が、夫婦の結束を強める要因になるとされています。
また、別の研究では、子どもと一緒に過ごす時間が多い家庭ほど、夫婦間のストレスが軽減される傾向があることも示されています
■子どもが生む“話題”と“笑い”の力
子どもは、日々の生活に小さな事件を起こしてくれます。
牛乳をこぼした、変なダンスを踊った、突然「パパって宇宙人?」と聞いてきた——そんな出来事が、夫婦の間に自然な会話と笑いを生み出すのです。
これは一例ですが、ある家庭で1週間、夫婦の会話のきっかけを記録してみると…
子どもの話題 12回
仕事の話 5回
家事・生活の相談 7回
ニュース・時事 3回
趣味・娯楽 2回
このように、子どもに関する話題が圧倒的に多く、夫婦の会話の中心になっていることがわかります。
これは、子どもが家庭内の“共通の関心事”であることを示しています。
■子どもがいるからこそ、夫婦は「チーム」になれる
子育ては、時に大変で、思い通りにいかないことも多いもの。
でも、その過程で夫婦は自然と「チーム」としての意識を持つようになります。
- 夜泣きの対応を交代で行う
- 保育園の送り迎えを分担する
- 子どもの進路について一緒に考える
こうした協働作業の積み重ねが、夫婦の信頼関係を強化していくのです。
子どもは、ただ可愛い存在というだけでなく、家庭の空気を変える力を持った“触媒”です。
閉塞感のある日常に、笑いと会話をもたらし、夫婦の関係を再構築するきっかけをくれる。
次のセクションでは、そんな子どもとの時間を、より豊かに、意味あるものにするための「家族時間の質を高める3つの原則」についてお話しします。
4. 家族時間の質を高める3つの原則
「家族ともっと一緒にいたい」と思っても、忙しい日々の中で時間を確保するのは簡単ではありません。
だからこそ大切なのは、“時間の長さ”ではなく“質”を高めることです。
ここでは、心理学や行動経済学の知見をもとに、家族時間を豊かにするための3つの原則を紹介します。
原則①:「マイクロモーメント」を意識する
マイクロモーメントとは、数分〜十数分の短い時間でも、心を込めて向き合う瞬間のこと。Googleが提唱したこの概念は、マーケティングだけでなく、家庭生活にも応用できます。
たとえば…
- 朝の「いってらっしゃい」を目を見て言う
- 子どもが描いた絵を5分だけでもじっくり見る
- 寝る前に「今日一番楽しかったこと」を聞く
こうした短い時間でも、“完全に相手に集中する”ことで、深い絆が生まれるのです。
原則②:「共体験」を設計する
家族の絆を深めるには、“一緒に何かをする”体験が効果的です。
特に、子どもとの共体験は、夫婦の会話のきっかけにもなります。
以下は、忙しいビジネスマンでも実践しやすい共体験の例です。
朝 → 一緒に朝ごはんを作る → 役割分担で自然な会話が生まれる
夕方→ お風呂でクイズ大会 → 遊びながら知的刺激も
夜 → 絵本の読み聞かせ → 感情の共有と安心感
週末→ 近所の公園でピクニック → 非日常感がリフレッシュに
原則③:「感情のラベリング」を習慣にする
子どもとの会話の中で、感情に名前をつける(ラベリング)ことは、親子関係だけでなく、夫婦関係にも良い影響を与えます。
たとえば…
- 「今日は楽しかったね。パパも嬉しかったよ」
- 「ママ、ちょっと疲れてるみたいだね。大丈夫?」
こうした言葉がけは、感情の共有を促し、家庭内の共感力を高める効果があります。
家族時間の“質”を高めるには、特別なイベントや長時間の旅行よりも、日々の小さな積み重ねが鍵になります。
次のセクションでは、こうした時間をどうやって日常に組み込むか、「時間設計術」について具体的に紹介していきます。
5. 家族の時間を守るための時間設計術
「家族との時間を大切にしたい」と思っていても、仕事やタスクに追われて、気づけば一日が終わっている——そんな日々を過ごしていないでしょうか。?
ここでは、忙しいビジネスマンでも実践できる“時間の設計術”を紹介します。
ポイントは、「時間を“つくる”」のではなく、「時間を“守る”」という発想に切り替えること。
■原則①:タイムブロッキングで“家族時間”を先に確保する
タイムブロッキングとは、1日のスケジュールをあらかじめブロック単位で区切り、予定を先に埋めておく時間管理法。
Googleの元CEOエリック・シュミットも実践していたことで知られています。
この方法のポイントは、「家族との時間」を最初にスケジュールに入れること。
仕事の合間に“なんとなく”時間を作るのではなく、家族時間を“予定”として扱うことで、優先順位が明確になります。
6:30〜7:30 子どもと朝食・準備
9:00〜12:00 集中仕事タイム
12:00〜13:00 昼食・軽い運動
13:00〜17:30 会議・作業
18:00〜19:00 子どもと遊ぶ・夕食
20:00〜21:00 寝かしつけ・読書
21:00〜22:30 仕事の続き・自由時間
■原則②:「境界線」を引くためのルールを決める
リモートワークでは、仕事と家庭の境界が曖昧になりがちです。
だからこそ、“ここからは家庭の時間”という明確なルールを設けることが大切になります。
たとえば…
- 18時以降はPCを開かない
- 子どもが起きている時間はスマホを触らない
- 家族との食事中は通知をオフにする
こうしたルールを家族と共有し、守ることが信頼関係の土台になります。
■原則③:「週末のリズム」を整える
平日はどうしても忙しく、時間を取るのは難しい。
だからこそ、週末に“家族のリズム”を整える時間を意識的に設けることが重要です。
おすすめは、「週末のルーティン」をつくること。
- 土曜の朝は家族でパン屋さんへ行く
- 日曜の午後は公園でピクニック
- 週1回は“家族会議”を開く(子どもも参加)
こうした習慣があると、家族の中に“安心できるリズム”が生まれ、絆が深まります。
家族との時間は、自然に生まれるものではなく、意識して“設計”しなければ守れない時代になってきています。
しかし、ちょっとした工夫とルールで、家族の時間はもっと豊かに、もっとあたたかくなる。
次のセクションでは、子どもとの時間を通じて、夫婦関係をどう育て直すかについて、さらに深掘りしていきます。
6. 夫婦関係を育て直すために
子どもとの時間を通じて、家族の絆が深まる。
それは、夫婦関係にも大きな影響を与えます。
ここでは、子どもを媒介にした“夫婦の再接続”について、心理学的な視点と実践的なアプローチを紹介します。
■「共感の再構築」が夫婦関係を変える
心理学者ジョン・ゴットマンは、夫婦関係を良好に保つためには「日常の小さな共感」が鍵だと述べています。
特別なイベントやサプライズよりも、日々の中で“共に感じる”ことが、信頼と安心を育てるのです。
子どもを通じて生まれる感情。
たとえば、成長への喜び、育児の大変さ、ちょっとした笑い。
これらを夫婦で共有することが、共感の再構築につながります。
■「感謝」と「承認」のコミュニケーションを習慣に
夫婦関係が冷え込む原因のひとつに、「当たり前の積み重ね」があります。相手の行動や努力に対して、感謝や承認の言葉をかける機会が減っていくと、関係は徐々に摩耗していきます。
そこでおすすめなのが、“1日1ありがとう”ルール。
- 「今日、子どもの寝かしつけありがとう」
- 「朝ごはん作ってくれて助かったよ」
- 「あの時フォローしてくれて嬉しかった」
こうした言葉は、相手の存在価値を認めるサインになります。
心理学では「ポジティブ・リインフォースメント(正の強化)」と呼ばれ、関係性を良好に保つための基本的なスキルとされています。
■“夫婦の時間”を意識的に取り戻す
子育てに追われる日々の中で、夫婦だけの時間はどうしても後回しになりがち。
でも、夫婦関係は“家族の土台”。だからこそ、意識的に時間をつくることが大切です。
おすすめは、「週に1回、30分だけの夫婦会話タイム」。
私たちも、週に1回だけ夫婦で話す時間をつくっています。たった30分ですが、不思議とその週は衝突が減ります。
- 子どもが寝た後に、コーヒーを飲みながら話す
- 1週間の“ありがとう”を伝え合う
- 子どもの成長や将来について語り合う
こうした時間が、“親”ではなく“パートナー”としての関係を再確認する機会になります。
子どもは、夫婦の間に自然な会話と感情の共有をもたらしてくれる存在。でも、それを活かすかどうかは、私たち次第です。
次の最終セクションでは、これまでの内容を振り返りながら、読者のあなたに向けたエールと、今日からできる小さな一歩を提案します。
7. おわりに
リモートワークが当たり前になった今、家族と過ごす時間は確かに増えました。
でも、それが必ずしも「幸せな時間」になるとは限らない。
むしろ、近すぎる距離がストレスを生み、夫婦関係にひずみをもたらすこともある。
そんな現実が、コロナ禍を通じて浮き彫りになりました。
けれど、私たちには希望があります。
それが、子どもの存在です。
子どもは、家庭に風を通し、会話を生み、笑いを運んでくれる。
ときにトラブルメーカーでもあるけれど、その存在があるからこそ、夫婦は“チーム”になれる。
子どもを通じて、夫婦はもう一度つながることができるのです。
本記事では、心理学や統計データをもとに、家族の絆を深めるためのヒントをお届けしました。最後に、今日からできる小さな一歩を3つだけ、あなたに贈ります。
今日からできる3つのアクション
- 1日1回、子どもと“目を見て話す”時間をつくる
→ たった5分でも、心が通う瞬間になります。
- パートナーに“ありがとう”を伝える
→ 小さな感謝が、大きな信頼を育てます。
- 週末に“家族のルーティン”をひとつ決める
→ 安心できるリズムが、家庭の土台になります。
あなたは最近、パートナーと“感情”を共有していますか?
それとも、“業務連絡”だけになっていませんか?
家族の形に正解はありません。
でも、「大切にしたい」という気持ちがあれば、どんな形でも育てていける。
家族との時間は、自然に守られるものではありません。
意識しなければ、仕事や日常の忙しさに飲み込まれてしまいます。
だからこそ、今日から5分でいい。
目を見て話す時間をつくってみてください。
その小さな積み重ねが、5年後、10年後の夫婦関係をつくります。

コメント